大崎市古川の整体はひふみ整体院、大崎市古川スポーツ整体

「しなやかな身体をつくる」 著:加藤廣直(2007年1月)

1、はじめに

誰でもが腰痛という言葉を知っており、身近に感じている疾患ですが、その実これだけ医学が進歩している現代においても、いわゆる「腰痛持ち」のひとは一向に減少していないようでもあります。むしろ、今後は若い人の運動不足・高齢化による介護等により、腰痛の人の割合は増えるのではないのかとも思われます。では、なぜ医学の進んだ現代でも腰痛が治せないのか?私も整体治療を自宅にて行なっていた時も、病院勤めの看護士さん等がわざわざ来院され整体治療を受けたり、また、公立病院で勤めていたときも看護士・介護士の方々の何人かは腰痛で苦労しており、なかには休職しなければならないほど重症・慢性化しているかたもおられました。同じ職場に整形外科の医者がいるのにである!。対処法としても湿布薬や「しばらく安静に」ということぐらい。
特に腰痛は最も身近で、多くの人が経験する疾患ですが、これが慢性化、重症化すると下着や靴下をひとりで履いたり、脱いだりすることも出来なくなるほど大変な疾患の一面をもっています。比較的軽症のうちに適切な治療を施さないと、老化や日常生活活動の積み重ねのうちに、確実に悪化する傾向がみられます。私の臨床経験や他の治療師も指摘するように、腰痛の原因の多くは「身体の歪み」が挙げられます。これはまず間違いの無い、厳然たる事実と確信しています。そして、腰は身体の中心に位置し、上半身の歪み、下半身の歪みが腰の部分でぶつかり合い、大きなねじれを作り「痛み」を発現させるともいえます。常に、腰は上から下からの力にいじめられ、悲鳴を挙げているのです。私は臨床のなかで多くの疾患を診てきましたが、身体の中心で生じる「腰痛」が他の疾患を間接的に引き起こし、歪みの法則に則り相互に関連していると確信しています。その証拠に腰の歪みを取るように身体を調整することにより、肩こり、片頭痛など他の部位の痛みも消失することが多くみられます。「腰なんか痛くない、私の悩みは肩こりよ!」というあなたも、騙されたと思って、一度腰の歪みをみてください。きっと高い確率で「隠れた歪み」を発見し、一見関係なさそうな、肩こりの根本原因を取り除くことが出来るかもしれません。
もう一度言いましょう。
「腰は身体の中心、腰(中心)の歪みは全身の歪み!」
これは私の信念でもあります。

2、腰は身体の要

「腰」という文字を分解してみると身体という意味の月(にくずき)に要と書きます。呼んで字のごとく腰は身体の「要」にあたります。昔から「肝腎要」といわれますが肝臓・腎臓・腰が大事であることから物事の重要さを示す用語として用いられてきました。
また、気功法(呼吸法)の鍛錬においても、腰の部分にあたる臍下丹田は重要な部分としてとらえられています。確かにあらゆるスポーツ、武道においても腰(丹田)に力が有るのと無いのとでは動作においての安定感・正確性が異なります。とくにどのスポーツに共通している走り込みなどの練習は下半身の強化ともいえますが、本来は腰の強化、「粘り腰」を作ることが重要とされているのです。私は日課として呼吸法を実践し、臍下丹田の鍛錬を自分に課しています。そして治療中は臍下丹田に気を沈めるイメージで「腰の力」をいかに治療に転換するかを意識しながら治療にあたっています。これを意識するのと、しないのとでは治療効果に大きな差が出ると最近、強く実感します。また、患者さんも、治療中に上手く腰を意識することが出来るようになると回復速度が急激に増して来るようです。
(スポーツの絵)
 ※あらゆるスポーツの基本は腰の強さ!

3、四足動物から立って歩くようになってから腰痛が出現した!?

もともと、人間も進化の過程で、獣と同じように四本足で野山を駆け回っていました。したがって、脊柱(背骨)も四つの支点で体重を支えるような構造をしていたのです。それが、進化の過程を経て二本足で立つようになり、二本足用に対応した構造をしていない、脊柱の弱点が腰の部分に生じてしまいました。その弱点をカバーする為に脊柱は形態的に変化し、身体の要である腰にかかる負担がだんだん増加してしまったのです。また、股関節部にある腸腰筋といわれる筋肉は太ももを持ち上げる作用のある筋肉ですが、この筋肉群も四足から二足歩行になることにより機能変換し、今現在も二本足歩行に適合するため進化の途中といわれています。ちょっと、つまらない話しかもしれませんが、つまりは、人体は二本足で歩くことに、皆が思うほど適切ではない構造体である、ということです。この不適切さが身体の歪みをつくり、腰痛を引き起こすともいえるのです。
 (四本足、二本足の絵)

4、身体の環境を整える

背骨は骨でできているとはいえ、それは積み木細工のようなものであるから、いくら頑張ったとしても、自ら(骨)の力だけで姿勢を制御することはできない。いわば背骨には修復力など一つもないのです。その修復力のまったくない背骨を相手にして、いくらもとの姿に戻そうとしても、それは現実的に無理な話しです。そうした積み木細工のような不安定な背骨を大黒柱として存在させているのは、背骨を守る線維組織と、その外側でしっかりと保護している筋肉のおかげです。どちらかといえば、姿勢というと背骨ばかりに目がいってしまいますが、この筋肉の働きがなければ背骨はただの骨の連なりでしかないのです。私たちの身体のあらゆる動きは、この筋肉がつくりだしているのです。背骨を保護している主な筋肉では、僧帽筋、大胸筋、腹筋群、広背筋、殿筋群などが挙げられます。これらの筋肉は、骨とともに身体の姿勢をつくりだすもので、骨格筋とよばれています。私たちの姿勢を考えるときには、骨部よりもむしろ筋肉に注目すべきであり、この筋肉の働きと力は見逃せないものがあるといえます。
筋肉といえば力こぶみたいなものや、ぶよぶよした筋肉の塊といった感じを思い浮かべてしまうものですが、この筋肉にいったん力が入れられると、ものすごい力が発揮されるのです。まるで弾力性に富んだゴムのように、ピンと硬く張り詰めて少々の殴打でもビクともしないほどの強靭さをみせてくれます。
例えば、私たちの筋肉は鍛えることにより、百メートルを十秒で走ることもできるし、二百キロのバーベルを持ち上げることもできます。しかし、それだけ強靭な筋肉であるから、少しでも筋肉の歪みが生じてしまうと、ひとたまりもなく身体はねじまがり、ひん曲げられてしまう危険性があります。少々の筋肉の歪みであっても、骨格それ自体には姿勢を元に戻す力はまったくないのです。つまり、筋肉の思うがままに姿勢は変えられてしまうのです。いくら背骨の一部分をコルセットなどで固定したり、いじくりまわして治療したとしても、馬鹿力のある筋肉にはかなわないのです。簡単にもとの歪んだ身体に戻ってしまいます。脊椎をバランスよく安定させているのは、この馬鹿力の筋肉や靱帯が前後、左右から支持し固定させているからであり、これらに緊張や弛緩、硬軟の差が生じてしまうと、一気にバランスが崩れ、身体の歪みを発生させてしまうことになるのです。
 その影響は、手足の不揃いにおいても、脊椎の歪みとして現われるのです。私たちの身体を解剖学的にみると、全ての諸器官がなんらかの関係をもって存在しているからです。たとえば、背中にある大きな筋肉の広背筋の片方に、緊張(こり)が起こった場合、脊椎は緊張の起こった側にひっぱられるために、中心を保つことができなくなって、脊椎は歪みを起こしてしまうことになります。いわば、手足の不揃い一つでも脊椎を狂わせ、脊髄から出ている神経の働きを遮断したり、刺激して腰痛を起こさせることになるのです。
 まさか、手足の差で腰痛が引き起こされるは思わないでしょうが、そう考えが及ばないところに、現代医学の行き詰まりを感じるのです。たとえば、姿勢の悪い患者の姿勢を治すのではなく、その患者さんの患部ばかりを治療するという対症療法に陥っているために、私たちの身体全体を見渡して治療をするという方法が思い浮かばないのではないでしょうか。

5、骨盤自体傾いている

人間が直立した姿を真横から眺めると、脊柱はまっすぐに直線となって身体を支えているわけではなく、骨盤の上でややS字状に曲がっていて、その状態で直立しているのです。つまり骨盤自体が地面に対して、やや傾斜を持った状態になっているわけです。そのため、前の方に動く力が働き、腰には相当な無理がかかります。ちょっと難しいでしょうか?この基本構造に身体運動の重心移動などの要素が加わることにより身体は複雑なバランス機能が求められます。これらは常に中枢神経系の支配により意識的・無意識的に絶妙にバランスを保たれていますが、身体の歪みにより左右の筋・神経バランスが崩れるとスムーズな動きができなくなりある部分に負担がかかりやがて痛みとなって私たちを悩ませるわけです。

6、いわゆる腰痛症とは

腰痛の中で、もっとも多いのが「腰痛症」で、すべての腰痛の半分以上を占めています。腰痛症という病名は、椎間板ヘルニアとか脊椎分離症などと比べて、具体的ではありませんが、この、まさにつかみどころのない腰の痛みが腰痛症の大きな特徴になっています。腰痛で病院などを訪れ、検査等を行ないますが、検査を行なっても原因がつかめない場合に、とりあえず腰部の痛みがあるから「腰痛症」という病名がいただけます。病名において「~症」「~症候群」とつく時は原因がはっきりわからない場合が多いのです。「~症」「~症候群」は別名「病気のゴミ箱」と呼ばれています。ではなぜ「~症」や「~症候群」としてあつかわれてしまうのでしょうか。ようは腰の痛みばかり診ているので原因がつかめないのではないでしょうか。また、足部の歪みが膝→骨盤→腰と歪みの連鎖として腰痛を引き起こしている場合もありますし、ムチウチによる頚部周囲の筋バランスの歪みが背中の歪みになり、ついには腰まで歪みが広がり腰の痛みとなって出現している場合もあります。この全身の歪みをトータル的に観察できる技術があれば高価な検査機器を用いなくても、適切な治療へと結びつけることができるようになります。この例で言えば、腰が痛いと患者さんの訴えが有っても腰を直接触る必要は無く、足部の歪み、頚部周囲の歪みを治療することにより筋肉の連動作用にて結果的に腰部の痛みを改善することが可能となります。この原因を無視して、腰に痛み止めの注射や電気、湿布を貼るなどの対処的治療を行っていては、すぐに再発という経過をたどる可能性が高いといわざるをえません。少なくとも腰痛では「~症」などと原因がわからないようでは適切な治療は不可能でしょう。
(ゴミ箱の絵)

7、腰痛の原因は様々だが結局は歪みである

いわゆる腰痛の原因とは何なのでしょうか?ズバリ、それはひとそれぞれ異なるといわざるをえません。肉体労働か事務職か等の職業の違いだったり、交通事故でのムチウチ症が原因であったり、扁平足・足首の捻挫・膝関節の痛みなどの下半身の影響が腰痛の原因になってる場合も多々見受けられます。打撲・打ち身など直接的な衝撃が、腰に加わった場合、これが原因となりますが、それ以外の腰痛(腰部椎間板ヘルニア・ギックリ腰・慢性腰痛症等)は腰以外からの原因がほとんどを締めると、治療を通じて私は感じています。もっと端的に述べれば、職業や先に挙げた下半身の怪我や変形・ムチウチ等の交通事故後遺症・日常生活における体癖(利き手・利き足・座り方等)など変則的な身体の使い方をすることにより、特定の筋肉を過剰使用することで、身体の左右差が生じる。(上下、ねじれの左右差もある)この左右差が身体の「歪み」となり体の中心部位である「腰部」において捻じれを生じることにより、結果として腰痛という「痛み」が生じてくる。であるからこそ、それぞれの原因を無視して、ただ単に痛みを湿布や電気で一次的にごまかしても根本原因である、身体の「歪み」を改善しなければいわゆる「再発」を繰り返すことになるのである。
歪みの例として、一見左右の手足の長さが異なったように見える、偽長短縮、まっすぐ立っているつもりでも左右に体が傾いている・写真をとるといつも首が捻じれている・肩の高さに違いがある、など様々な形態変化として現われます。私が治療を行なう際には治療前の左右の手足の長さの違い・骨盤の捻じれなど写真で撮影し、治療によりその左右差がどのように変化(改善)したのかを治療後に再度撮影します。これにより患者さんに歪みの改善度合いの説明と
ご理解に利用しています。

         

治療前            治療後

8、身体の「歪み」は病気である!

よく病気は身体に「痛み」で警告してくると思われていますが、しかし、その多くは、すでに身体の歪みで警告してきているのです。どちらかといえば私達は、「痛くないから病気ではない」といった発想で病気というものを捉えています。痛みがイコール病気で有るという認識です。そのために、痛みが取れれば「病気が治った」と思っているところがあります。このような認識であるために、また同じ部位に同じような痛みが生じると「再発」という言葉で処理してしまう。しかし、私から診れば、それは「痛み」が一時的におさまっているだけのことであって、病気は依然として病気のまま残されている状態なのです。少なくとも「再発」ではない。病気が治ったのではなく、単に痛みが止まっただけのことなのです。何一つとして腰痛の原因は解決していないのです。こうした「痛くないから病気ではない」という認識が改まらないかぎり、私達は病気から、少なくとも腰痛からは開放されることはできないでしょう。その結果、あちらの病院、こちらの病院、何年も接骨院に通う、いわゆる、「治療ジプシー」になってしまうのです。腰痛の原因を究明して、その原因を解消させて腰痛が治るのではなく、原因の結果で現われた、痛いところだけを取り除くという短絡的な発想で腰痛治療が行なわれているのである。もちろん、それが全てであるとはいわないが、根本的な発想はそんなところではないでしょうか。

9、歪みと腰痛の関係を考察する

腰痛を根本的に治すのには、身体の構造を是正することが大事です。これを筋骨格系から眺めてみると、大黒柱(背骨)を支え、身体動作を自在に操っているのが筋肉であることからも分ります。腰部にある筋肉は、広背筋、内・外腹斜筋、腰方形筋、起立筋、腸腰筋など多くの筋が挙げられますが、こうした筋群の働きによって、背骨は、前後、左右、ねじれといった動きが可能になります。さらに股関節の動きをあわせて、微妙な動作も自由自在にできる仕組になっています。ところが左右の筋肉のバランスがとれていれば問題はないのですが、いったん筋肉の左右バランスを失うと、筋肉の馬鹿力によって、身体は簡単にひん曲がってしまうのです。たとえば、足の裏に小さなトゲが刺さっただけで、全身に不均衡な力が加わって、一気に身体の安定を奪ってしまうことがあります。これは何もトゲでなくてもよいのです。右利き、左利きといった自分の癖であっても、不均衡な負荷が連続的にかかることによって、身体は歪んでいくのです。
 このように、腰痛の原因が長年の癖であったなどということは多くあります。普通では考えられないような原因であったとしても、建物の例を示すまでもなく、そのちょっとした不均衡が積み重なると、身体に歪みを生じさせます。たとえ初めは右肩の異常であったとしても、「歪みの法則」によって腰部に歪みを与えることになり、結果として腰痛を引き起こすことになるのです。
 繰り返しになりますが、歪みの法則は、手足からの歪みであっても、腰部に歪みをもたらすことを示しています。たとえば、寝違いにより頭部の傾きに左右差が生じた場合、連鎖的に背骨の両脇の筋肉を介して、坐骨神経の左右差、腓骨神経の左右差が生じ、殿部においても股関節を中心に、右と左に緊張と弛緩の差が生じます。そうした不均衡な状態は、やがて腰部にまで影響を及ぼすのです。いわば、腰部というのは、身体のどこからでも、歪みのしわ寄せが及んでくる場所ということができるのです。繰り返しになますが、私たちが腰痛で悩まされるのは、何も骨盤が悪いからといった直接的なものがすべての原因になっているわけではないのです。先にも述べたように、足の裏のトゲ1本でも、腰部に歪みを生じさせる原因となるのです。それは二本足で立ち上がった私たち人間の宿命でもあります。何度も説明してきたように、私たちの身体は、重心安定を求めようとするために、身体の弱い部分と強い部分の引き合いの上に1番もろい場所を歪めてしまうのです。その身体の1番もろい場所が腰部ということができるのです。腰部はいつでも「歪み」の集中攻撃を身体全体から受けているといってもよいのです。それだけに、いつでも身体は総合的なバランスを保っていないと、腰痛の被害から抜け出ることはできないのです。誤解を恐れずに言わせていただくならば、「腰痛は、けっして腰だけの病気ではない」身体全体からの歪みから生まれる病気なのです。そのために、いくら腰部の治療をしたとしても、腰痛を根治することはできないのです。身体の歪みから発している病気であることを理解することによって、はじめて腰痛根治が可能となるのです。

10、歪みには法則がある

私たちの身体の中でもっとも酷使されているのが両手と両足です。多くの身体の歪みはその酷使されている両手と両足から始まり。そのまま長年放置しておくと、さまざまな身体の歪みに発展してしまいます。その結果として種々の病気を引き起こしてしまうのです。
腰痛も例外ではなく、私のところに訪れる患者さんのほとんどが両手・両足の歪みを持っており、データ的にもはっきりしています。また、身体に一方に伸びる力が加わると、その反対側には縮む力が加わるというように、左右、上下、前後にわたって、身体がバランスを保とうと必死に調整し結果として歪みを生じていることがわかるのです。わかり易く言うならば、右に5の引っ張りがあると、左に5の縮みが生じると考えてみると良いです。それは左右だけのことではなく、右上に3の引っ張りがあると、左下3の縮みが生じるというように、いつでも身体は、プラス・マイナス、ゼロにしようとして働く性質があるのです。ただし、その働きによって身体は大きく歪んだり、捩じれ曲がってしまうのです。
 手足の歪みが腰痛まで引き起こすことは、一般的には考えにくいことかもしれませんが、私たちの身体は一部分が歪むのではなく、それが全体的に「歪みの法則」のままに歪んでいくために、まったく関係がないと思われるような部分にまで、歪みを発生させてしまうのです。その歪みの法則さえ理解してしまえば、腰痛を治すつもりで来た患者さんが、長年苦しんでいた肩こりまで治ってしまって驚いたという話しも納得できるようになるのです。これは何も手品でもなければ、魔術でもない。れっきとした解剖学的・生理学的な裏づけがあっての歪みの法則なのです。
(歪みの図)

11、歪みの連鎖反応

最近注目を集めているのは、靴と腰痛の関係でしょうか。解剖学的神経筋連鎖反応からみればまったく当たり前のことのことなのですが、ここ数年前から靴の選択を誤ると腰痛になると警告する医者が増えてきています。
ただしその発想は、つぼ療法と同じようなもので、それが神経系に置き換えら
れているだけのことのようです。たとえば、靴によって足が歪み、そこから痛みが発生すると、足の神経を支配する脊椎にも痛みが伝わり、結果として腰痛を起こすという考え方のようです。これは第4、5腰椎などが足の部分の神経とつながっているために、靴で足を傷めると、そのまま腰にまで痛みが走るという考え方なのでしょう。確かに痛みの経路はそのとうりである。しかし、これだけでは説明不足ではないかと思われます。なぜならば、足が傷んだから神経を刺激して、腰に痛みを伝えるとは限らないからです。それよりも大切なことは、足が傷んだという事実をまず捉え、そこに足首のゆがみが発生していることを認識すべきです。
 足にトゲが刺さっただけでも身体のバランスを崩すくらいにデリケートな構造であるからには、靴によって足に歪みが生じたならば、当然、身体のバランスは乱れてくる。その乱れが大腿部から腰にかけて連鎖反応を起こし、結果として腰痛を引き起こすことになるのです。けっして足の痛みが腰に伝わる為に腰痛になるというのではないのです。足の歪みが腰の歪みを誘発したことによって、腰痛を引き起こすのです。いわば歪みが歪みを生んで、新たな病気に進展するということなのです。
 神経系のみを追っていると、その治療法も身体の歪みを調整するという発想に結びついていかない。逆に、痛みを止めればよいという、安易な対症療法に進んでいっていしまう危険性が大であり、実際そのような治療が行なわれています。なぜならば、足の痛みが腰の痛みとなるのであれば、足の痛みをとめれば腰の痛みも止まるという考え方になってしまうからです。ツボ療法と同じようなもといったのはこのためなのです。
 少なくと、足の痛みを止めても腰の痛みは止らない。腰痛の根本原因は、腰の歪みによって引き起こされているからであり、それを治療するには足の痛みを取り除くのではなく、足の歪みを調整しないことには、根本的な治療とはけっしてならないのです。この歪みの法則がわかれば、何をどのように治療していけばよいのか理解できるはずなのです。私が繰り返し対症療法は危険であると申し上げているのは、その治療法よりも、むしろ基本的な考え方を指摘しているのです。

12、筋力を制御するバランス

私たちの身体は、病気になってから歪むのではなく、歪むから病気を引き起こしてしまうのです。先に述べたように、私たちの身体は骨格によって形成され、筋肉によって骨格を固定したり、運動ができるようになっていますが、いったん、このバランスが崩れると、さまざまな病相が現われてくるのです。これは腰痛に限らず、骨格を覆っている筋力に不安定要素が加わると、内蔵を圧迫したり、関節の働きを阻害してしまうことになり、ここから内臓諸器管の疾患や関節炎などを引き起こすことになるのです。すべては身体のバランスを失うところから、問題は発生しているのです。けっして病気だから姿勢が悪いのではないのです。姿勢が悪いから病気を誘発して、病人になってしまうのです。たとえば、腰痛を抱えている人に、背筋がピンとまっすぐになっている人はいない。これを一般的には、腰痛が発生したから身体が丸まってしまうのだと考えるが、背筋がピンとまっすぐで正常な姿勢を保っているならば、腰痛にはならないのです。けっして腰痛が発生したから身体が曲がったのではないのです。身体が歪んだから腰痛が発生したのです。なぜならば、正常な姿勢を保っていたならば、腰痛になる原因はどこにもないからです。日常の生活の中で、不自然な姿勢を続けたり、不安定なかっこうで仕事をしたりしていると、そこから身体に歪みが生まれ、やがて腰痛という結果が現われるのです。
 腰痛を訴える患者さんの中には、食欲不振や脱力感、胸苦しさを訴える人が多い。この状態がさらに進むと、内臓諸器官に異常が発生して、痛みや苦しさをともなう厳しい病気の洗礼を受けるようになります。
 さらに進むと、病気を併発して、上半身にまで影響を及ぼし、偏頭痛や重度の肩こりを訴えてくるようになる。初めは下半身からの歪みから始まった病気であっても、歪みの法則から身体全体にまで、その影響が及んでいってしまうという恐ろしい状態になるのです。私が対症療法の弊害を訴えているのは、まさにこうした歪みの法則にもとずく、病気の連鎖を危惧しているからなのです。その痛み、苦しみの部位だけを治療したとしても、歪みの連鎖反応を完全に押さえ込まないと、病気は完治することはないのです。

13、長さの違いは歪みの証拠

 私たちは本気で腕が長くなったり、足が短くなったりすると信じているところがあるようです。しかし、特別な例を除けば、そのほとんどが身体的な歪みによって、手足に長短が現われているのです。いわば、手足の長さが異なるというのは、まったくの錯覚であって、本来長さなど少しも変わってないのです。そのように思わせてしまっているのは、肩の歪みや骨盤の歪みなどが原因であることが多いのです。これを逆に考えてみると、手足がそろっていない人は、必ず身体のゆがみが発生しているということでもあります。もっとつきつめていえば、手足がそろっていない人はすでに病気を抱えているということになるのです。「私は右利きなので、右腕が少し長いのですよ」などと平気で言う人がいるが、これは大変な間違いです。既に正常な姿勢でないことを自ら立証しているようなものです。しかし、こうした風潮は、昔から常識のようになっていて、それが身体の歪みからくるものだという認識がまったくなされていない。いや、専門的な知識を持っている人達でさえも、手足の不揃いは治しようがないと諦めているところがあるのだから、一般人の私達に、正確な知識を求めようとしても無理なことかもしれない。しかし、このへんで私達も、少し賢い患者にならなければならないだろう。病気を薬と対症療法だけで退治するという発想ではなく、もっと自分たちの姿勢に対して関心を持つことが必要とされているのです。予防医学の面から考えても、どれだけ姿勢、バランスというものが大切なことか、もう少し知識として学ぶべきであると思います。ひっぱったり、押さえつけたりする治療法は身体のいち表面だけを相手にしているようなものなのです。これでは、身体のバランスを元に戻すことはできない。例えば一部の歪みがその治療法で治せたとしても、身体の前後、上下に歪みが残っていれば、身体のバランスは取り戻せないのです。
 私達の身体は前後、左右、上下といった、すべての釣り合いによって構成されているのであり、これらすべてが同時に揃っていかないかぎりは、本当の治療とはならないのです。
 

 

14、「痛み」の信憑性は? 痛みの感じ方はひとそれぞれ違う!?

治療の前に問診などで、患者さんの病気の状態を聞き出すことも大切ですが、自己申告の痛みでは個人で程度の差がありすぎて、正確さからみるとかなりの誤差が生じてくる。たとえば、1の痛みを7と申告するオーバーな人もいれば、7の痛みを2と申告する我慢強い人もいるのです。これを参考に治療をしたならば、どこかで治療の不足が生じたり、過剰な刺激与えてしまい、かえって患者さんの身体を傷めることになってしまう。しかし、残念ながら、これが現在、病院で採用されている治療の現状といえるのです。

15、身体は快不快の刺激に慣れてくる

私たちの身体は継続的に「ある刺激」を与え続けると徐々にその刺激に対して慣れてくるようにできています。これは順応性ともいえる。例えばはじめは100M歩くのが辛くても、日が経つにつれてそれほど苦にならなくなり、徐々に歩く距離は伸びていく。また、新しい環境に引越した時も、初めはストレスがかかるが徐々にその環境に慣れ、当たり前のことになってしまう。これはトレーニングでの「過負荷の法則」として応用されている。治療においても始めは心地いい強さのマッサージであっても、治療回数を重ねるにつれ、強さが物足りなくなり、徐々にグイグイと肘で押さなくては物足りなくなってしまうのです。この筋肉を直接揉み解す行為は、適度なものであれば血流が増加し、疼痛の減少も期待ができますが、肘でグイグイと押す、力任せでは毛細血管がところどころで破壊され一時的には凝りがほぐれたようでも、半日一日後には壊れた細胞を修復しようとし、組織が固くなってしまう現象がみられる。これでは何の為の治療か分らなくなってしまう。もちろん押されることに対する「気持ちよさ」だけを求めている場合はこのやり方でも良いが、本当に腰痛の苦しみから解放されたい、と考えているひとにはお勧めできない治療法ともいえます。その場限りの痛み止めならまだ良いが、強い刺激に身体が慣れてしまうとソフトな治療・身体に問い掛けるような治療法の効果が半減してしまうのです。つまり鈍感な身体になってしまうのです。

16、歪みは薬物・機械・器具では治らない

さて、歪みが病気の原因をつくると捉えてみると、これまでの治療法に対する見方や考え方が百八十度変わってくるのです。たとえば、薬物で身体の歪みが治せるものかどうか。あるいは、磁気や薬効成分などを塗布した貼り薬で、はたして身体のゆがみが治せるものかどうか。または、身体を固定したり、機械で身体を伸ばしたりして、身体の歪みが是正できるものかどうか。
 さらに付け加えるならば、温めたり、圧迫したり、冷やしたり、押さえつけたり、叩いたり、捩じったりして身体の歪みを治せるものかどうか。
 身体の歪みを治すという発想のもとに、この様な問いかけをしてみると、私達の病気に対する治療法が、いかに対症療法的な発想であったか気づかれることと思います。そのどれ一つとっても、部分的な治療でしかないからなのです。
 確かに理論的には正しいかもしれません。貼り薬によって血行をよくすることも、薬物によって痛みを止めることも、それらは生科学的にみても有効な治療法でしょう。だからといって、部分的な疾患のみを治したところで、病気の原因はなくならないのです。病気を治すということは、苦痛を取り除くことではないのです。確かに治療の一過程として、ひどい痛みの患者さんの痛みを取ることは必要ですが、それが全てでは治療として足りていないのです。最高なのは、病気の原因を取り除いて、その苦痛も取り除くことなのです。なぜならば、病気の原因がなくならないかぎり、何度でも苦痛は襲ってくるからです。苦痛が襲ってくる要因を残したままでは、病気は治ったとはいえないのです。目先の苦痛は解消したとしても、病気そのものは残っている。これを排除しないかぎりは健康体には戻れないのである。しかし、残念なことに、これだけはっきりと回答が出ているのにもかかわらず、多くの人々は目先の治療法に走りがちであり、その場だけを取り繕って、気持ちよさや安心感を得るという方法を選んでいるのです。私が賢い患者になれと申し上げているのは、何も医学の勉強をしなさいと勧めているわけではないのです。病気なる根本の原因を見極めて、治療法を選びなさいと申し上げているのです。私たちが学ばなければいけないことは、目先の効用や気持ちよさに振り回されることなく、病気がなぜ起こるかを見極めることなのです。そこからどうするべきなのか、という具体的な治療の考え方が生まれてくるのです。

17、現在の私の治療法

私が現在の「筋・神経バランスを整える治療法」を行なうことにいたったのは、私自身が病気で苦しんでいる立場であったからです。そのはじめは、救う立場ではなく、救われたいと願って、様々な病院、医師を巡り歩き、治療施設・断食施設ついにはインドのヨガ道場にまで覗き込んできました。しまいには宗教にまで救いを求めるほどでした。
 しかし、一向に回復しない病気に、我ながら嫌気がさして、それならばいっそ自分自身の力で、今まで学んだ治療法の優れた点を取捨選択し、治療法を開発しようと一年発起したのがそもそもの始まりでした。私にとっては未知の医学に挑戦したわけですが、生身の自分自身が研究材料であったので、死んだ学問とはならず、かえって患者サイドの発想に立って治療法を考えることができたと思います。
 治療師のスタートとしては、大手カイロプラクティック・スクールに二年間通学し、そこで認定資格を取得しました。ここで学んだ技術は、背骨などの関節を瞬間矯正する、いわゆる「ボキボキ整体」でした。しばらくはこの方法で治療を行なっていましたが、いくつかの理由により、この技法に対し危険性を感じ、疑問を抱くようになりました。瞬間矯正法は確かに速効性がある治療ではありましたが、ボキッと音が鳴れば上手く出来たような錯覚や
高齢者、骨粗鬆症の方、関節変形などを起こしている人に対して触診、動診のみで施術するのは危険性が拭い去れないと、感じながら治療を行なっていました。また、その場では矯正されたようでも、すぐにまた痛みや変形が起きてしまい、繰り返し矯正する。この繰り返しにより矯正される事が癖になってしまう人も高率で発生しているのも事実であると私は思います。その後、カイロに疑問を感じての治療行為は危険性が高いと考え、理学療法士の国家資格が取得できる専門学校に入学し、4年間の就学期間を経て、ようやく卒業し資格を授与することが出来ました。国家資格を取得することも、意義がありましたが、それ以上に、基礎医学から専門医学まで徹底的に履修できたことが振り返ってみると意義深いことであると感じています。特に臨床運動学にて中枢神経系と全身の筋肉との関係性をそれこそ、1から学べたことは現在の治療の土台になっていることは間違いありません。ここで巷の治療師にひと言伝えたいことは、整体の専門学校で学ぶ基礎医学だけでは、患者さんの健康を扱うのには少なすぎると言うことです。また、運動学を学ばずして瞬間矯正を行なうことの危険性を認識して欲しいということです。今は治療中の事故が無くて済んでいるかもしれませんが、長い治療家人生、いつか事故が起こるかもしれません。治療はロシアンルーレットではいけないのです。
卒業後は公立病院に勤務し、主に整形外科疾患・中枢神経疾患(脳梗塞による片麻痺など)のリハビリテーションを行なってきました。ここではさらに解剖生理学に踏み込み人体の神経機構と筋肉組織運動の関連性を学ぶことができました。例えば、脳梗塞の片麻痺の患者さんは手足の関節や筋肉に異常がないにも関わらずに脳の手足の運動・知覚をコントロールする部分が血腫や出血で故障することにより、それと対応する部分の手や足が動かなくなると言うことでした。つまり、「脳(神経)がだめになると、手足の運動もだめになる。」ということなのです。逆に脳(神経系)の働きを改善することにより手足の運動も改善することが出来るのです。言い換えれば全身筋肉のバランスの崩れから来る骨格の歪みは、全身の神経系の歪みとも言い換えられえるのです。かなり高度な話の内容になってきましたが、この神経と筋肉、骨格の歪みの相互関連性が理解できることにより治療の幅が格段に広がりました。腰痛患者さんは確かに骨盤が歪んでいますが、それは目に見える現象であって、その根本には骨を動かす筋肉の左右の歪みがあり、さらにその奥には筋肉を動かす神経系の歪みがあるのです。ですから、いくら骨をボキボキ鳴らして無理な共制をしても筋肉・神経系の歪みがある限りまた骨盤はすぐに歪んでしまうのです。よく矯正してもすぐに戻るというカラクリはここにあるのです。この解剖生理学的なカラクリを理解することで副作用が無く、無痛の整体が可能となるのです。

治療前              治療後

18、「筋・神経バランス調整法」は自然のままに調整する技術

よく腰が痛くて病院を訪ねるとベッドに横になって腰を上下に引っ張られることがあります。整形外科の専門の医者であっても、曲がった身体は引っ張って伸ばせばいいと考えているところがあります。解剖学的な話しは置いておきますが、私たちの身体を形成する背骨一つとっても、伸ばせば治るといったような単純な構造になっているわけではないのです。だいたい背骨はまっすぐに伸びているわけではなく、S字型カーブを描いているのである。この微妙なカーブがあるお陰で、私たちの身体は弾力性のある運動が可能となっているのです。
その微妙な背骨のカーブを元通りに復元しなければ、本来の治療とはならないわけであるから、ただ単に伸ばすだけでは解決しないのです。しかし、残念ながら現代医療では、伸ばすことしか考えられていない。一般的には、背骨の曲がりを治すには、腰に何かを当てたり、圧力を加えて無理やり伸ばしたり、コルセットのようなもので固定したり、頭と足の上下から引っ張ったりと、非常に原始的な発想でしか対処できていないと思われます。これに対し「筋・神経バランス調整法」はその名の通り筋肉と神経系の生理学的作用を利用し、歪んだ身体を自然の型に戻す治療法なのです。元来人間の身体は怪我をすると自然に治ろうとする「自然治癒力」というものがあるのです、このお陰で自然界の動物などは怪我をしても病院などに行かなくても自然と治ってしまうのです。「筋・神経バランス調整法」ではこの自然治癒力の方向性を定め、最大限に引き出す療法とも言えるのです。結局腰痛などを治すのは患者さん本人の自然治癒力(復元力)であり、私達治療師は治るお手伝いする立場にあると考えています。このために三日で回復するところを半日・その場で即効的に治すことが可能となってくるのです。

19、手入れの思想

病気は身体の故障である。それは身体的機能が正常に働かなくなった結果ということができます。ましてや、いくら気を配って日常生活を送ったとしても、私達人間の身体は疲労し、歪みを生じるわけであるから、病気という身体の故障から逃げることはできない宿命にあるのです。ただし、そのように身体の故障が起こることを予測していながら、私達は自分たちの身体を大切に手入れするということを怠っているように思う。身体を守ることは知っていても、手入れするという発想が欠けているのです。例えば自動車には車検整備というものがあり、定期的に細かな検査・点検・整備することが法的に決められています。あるいは、ところが私達の身体には、定期検査というものはあれ、定期的な手入れというものは行なわれていない。たしかに、人間ドックのような総合検査はあってもそれはあくまでも検査であって、身体の手入れをしてくれるわけではない。せいぜい画像的・数値的に異常を示してくれるだけで、姿勢の手入れをしてくれるわけではないのです。私達の身体は、検査する以上に、日々の手入れが必要なのです。1日の活動が終わったら、1日の疲れを取るように身体の歪みを調整して、良い調子に戻しておくことが必要なのです。とくに私達は利き手、利き足というものがあるように、左右の手足でもどちらかが多く使うような習慣ができている。この片方だけを多く使う習慣が左右の筋バランスを崩すことになり、身体の歪みに発展していくのです。また、肉体労働なのか事務仕事なのかという職業のちがいによっても身体の歪みの原因になってくるのです。これらの諸条件を踏まえて1日の終わりには身体の歪みを手入れする習慣を持つことが将来の腰痛予防につながるのです。
(図)

20、賢い患者になりなさい

医療技術が進歩して、治療の細分化が進むにつれて、全体的に病気を眺めるという姿勢がなくなってしまったように思われます。そのために、胃が悪くなれば胃腸専門の窓口に並び、偏頭痛だといえば、その病気を頼りに専門窓口に並ぶという具合に、その原因を解明するためではなく、その結果引き起こされた痛みの解消のために、それぞれの専門窓口に並んでいるのが現状です。例えば、片頭痛のため内科を受診したとしても、その偏頭痛が肩の歪みから発生しているとしても、肩の歪みなどの筋骨格系は整形外科の分野であるから原因を追求するまでには至らない。そして結局のところ、肩の歪みの治療ができないために、偏頭痛を完治させられないといったことになるのです。偏頭痛といったところで、それはあくまでも結果であって、それが病気の原因の全てではないのです。身体バランスが崩れて肩こりが発生し、それが偏頭痛を引き起こしているのです。そうした病気のプロセスをきちんと押さえておくことが、これからの賢い患者というものであると思います。

21、歪みチェックをしてみよう

ここで自分の身体が歪んでいるかどうか簡単にチェックする方法を紹介しましょう。自宅に全身を写せる鏡があるならば、それを利用して自分自身の姿を観察してみよう。チェックするポイントとしては、①身体に歪みは出ていないか、②ねじれ感はないか。などを頭に入れて、じっくりと観察してみることです。そして、あくまでも自然な形で全身の力を抜くことがコツです。

《立った場合の姿勢》立ったままの自然な姿で両手をだらんと垂らす。
 ・直立しているかどうか。
 ・両手は均等に下がっているか。
 ・首の傾きはあるか。
 ・肩の高低はどうか。
《手を伸ばした場合》立ったまま両手を挙げ、手のひらを前に向ける。
・左手と右手の伸び方に違いはないか。
・肘の部分に違和感はないか。
・肩の部分に違和感はないか。
《首を回した場合》立ったままで両手を降ろす。
・体の中心に首がのっているか。
・首を左右に倒して違和感はないか。
・首をひと回りさせて、引っかかりは感じないか。

簡単な検査なので、二、三分もあれば終わってしまう。しかし、これによって得られる情報は貴重なものである。たとえば、左手と右手の伸び方に違いがあったとすれならば、頭痛や肩こりから始まって、胃腸や肝臓の異常、腰痛などと、かなり多くの病気を隠し持っている可能性がある。もしもこの検査で一つでも該当するものがあるとすれば、健康と思っている人であっても病気は現在進行形なので要注意である。
(図)

22、身体は絶妙なバランスの上に成り立っている

私たちが健康な生活を送るためには、身体の環境整備が必要となってくる。例えば、腰を曲げたままの生活や、手足が不揃いのままでは、身体の歪みを発生させて、さまざまな病気を生み出してしまうことになり、内蔵諸器官の機能低下などを引き起こして、正常な生活が送れなくなってしまう。
 私たちの身体は非常にデリケートにできており、ちょっとしたバランスの崩れにより、簡単に身体を歪ませてしまうのです。
 なぜにこのようなことことが起こるのかといえば、日々の生活によって外的・内的にバランスを崩してしまう機会が多いからです。もちろん、私たちが人形であるならば、美しいバランスの取れた姿のままを継続できるだろうが、残念ながら私たちは動物。いわゆる動く生き物であるからには、身体に負担をかけなければ生きられないのです。はっきり言うならば、生きている限り、私たちの身体は歪みから逃げられないのです。長年にわたって身体を使用していれば、必ずどこかに歪みが生じてくる。たとえば、腰痛という病気も、そうしたプロセスを踏んできたのです。けっして、突然に腰痛になったとはいえないのです。大半は、日々の生活の積み重ねによって、手足に長短や硬軟が現われ、身体を捩じらしたり、傾かせたりするうちに、大きな歪みを発生させて腰痛を引き起こしてしまっているのです。
 私たちは身体のバランスというものに対して、非常に無頓着であるともいえます。正しい姿勢というものは、見た目にも美しいというだけでなく、精神的にも充実したものが感じられます。昔、病気は悪い姿勢の中に入ってくるといわれたように、医療が未発達の時代においても、それなりの健康管理が正しい姿勢の啓蒙によって行なわれていたのです。逆に医療が目覚しい勢いで進歩している現代においても、改めて姿勢の重要性を再認識し将来の病気に対し予防を努めなければならないのではないでしょうか。

23、おわりに

私たちは今、病気をどこから眺めてみるか、という新しい視点をもって病気を考えてみる必要がある。これまで私たちは、病気といえば「痛み」が発生している患部ばかりに目がいってしまい、そこだけを治せば、病気が治ったと考えてしまうところがあったように思います。目の前に現われた病状だけに対して行なう「対症療法」と同じような考え方ですが、これが現代医療の現状ともいえるのです。少なくとも当院では、腰痛の「痛」だけを取り除けば、腰痛が完治・改善したと思い込むことは避けなければならないという立場に立ち、日々の治療を行なっています。対処療法的な発想ではいつまでたっても腰痛から逃げることができないからです。私たちはもっと賢い患者にならなければならない。病気にとらわれるのではなく、健康体とはどういうものなのか、もっとプラスの方向に自分の姿をイメージしてみることが必要であると思います。現在は自分の身体に痛みが生じていないが、その姿は頭部が傾き、左右の肩の高さが違い、骨盤も歪んでいる。このような状態では近い将来腰痛・肩こりが発生することは目に見えているのです。痛みが無いから健康というのではく、自分の身体の歪みに対してもっと意識を向け、本当の健康体を手に入れる必要が有ると思われるのです。

24、Q&A:よくある質問コーナー

ここでは普段、患者さんから良く聞かれる質問や聞きたくてもなかなか聞けないという質問に対してQ&A方式で取り上げてみました。個人差はありますが今後の治療計画の参考になさってください。

Q1:どれ位の期間、通えばよいのか?

A1:これはどの患者さんも考えていることの一つですね。私もそうです。特に歯医者にかかるときは・・・。この答えはズバリ「人それぞれです。」と答えるしかないのです。どの病気でもそうですが、腰痛に関しても患者さんによっては、長期間患っている、症状が重い人・軽い人。また症状が重い人でも、施術の反応のよい人・悪い人など個人差があるからです。施術反応の良し悪しは、患者さんの身体を実際に触ってみないと分らない部分でもあるのです。特に治り難い人は、今迄、さまざまな治療院、病院を回られた、いわゆる「治療慣れした人」(ゴリゴリマッサージが好きな人)や性格的に頑固な人などがあります。特に性格的に頑固な人、物事に固執する傾向は男性に多く、中年以降でその傾向は強いようです。
   はっきりと、どれ位の期間で改善するのかということは、断言することはできません。しかし、自分の技術で手におえる腰痛かどうかは、おおよそ見当がつきます。私の手におえる腰痛の場合は、1~3日間の施術にて確かな手ごたえと、治療反応を感じることができます。また、治療前・治療後では患者さんの姿勢の変化が目に見える形で現われます。
   また、この逆で治療をしても何の変化も反応もみられない場合は、私の技術では「足りない」ということなのです。この場合は正直に患者さんに「すみませんが私の治療技術ではあなたの腰痛を改善することは、困難と思われます。」と答えてきました。私としては残念な瞬間ですが、改善する見込みもないのに、無駄に患者さんの貴重な時間とお金を使わせるわけにはいかないという考えからです。また、多くの治療院のように、治せもしないのに治せる振りをして、可能なかぎりお金を払わせるというやり方も自分としては、好きではありません。治療院経営を考えればそれが良いのかも知れませんが、自分の十年後のセラピストとしての成長を考えた場合してはいけないことと私は考えています。そしてこの悔しさをバネに自分なりに努力・研鑚してきたつもりです。 
   ちょっと話しが脱線しましたがQ1の答えは「やはり実際にその患者さんの身体の反応を診ないと分らない」というのが正直なところです。

Q2どれ位のペースで通院したらよいのか?週に何回?

A2 これもQ1に似ている質問ですね。やはり、これも患者さんそれぞれで、実際に身体の状態を手で感じ取らないとわからないといえます。通院ペースに関しては、どの患者さんにも「はじめの三回は出来るだけ毎日きて下さいね」と申し上げていますし。実際、多少無理をしてでも時間を作って来院してもらうようにしています。三回というのにも、私なりの理由があります。
一日目にはいくつかの手技を試し「さぐり」を入れます。それによって治療後の変化と身体の反応を客観的に分析します。これが一日目。
二日目に初日の治療を終えていったん家に帰っていただき、一晩寝てもらい、だいたい24時間経った後の変化を診ます。この「変化」とは一日経っての治療効果がどれくらい残っているか、夜ぐっすり眠れたか、また、それぞれの患者さんの初診時の訴えに変化・改善があるかなどを聞き出します。それによって、初日の治療内容の軌道修正を行い、その患者さんにあったピンポイントの治療内容を組み立てます。
三日目には、二日目の治療効果を客観的に判断します。判断内容は初日・二日と二回の治療によってどれだけ「関節のしなやかさ」、「筋肉の弾力性」、「神経反応の速度の変化」、「治療効果の持続性」などに改善があらわれたかをチェックし、今後の治療内容や治療ペースの判断材料にしています。このように大抵、三日目にはこの患者さんの身体の変化・改善のスピードや治療効果の持続性、つまり、この患者さんの「治し易さ」が手の感覚として分ります。この段階でQ1で申したように、変化のない患者、私では改善することが難しい患者が分ります。その場合は「申し訳ありませんが~」となります。
   治療効果が持続する患者さんは、一日おき、二日おき、週に一回と治療間隔を段階的に延ばしていくことが出来ますが、治療後は歪みが取れるが、一晩寝ると歪みがすぐに戻ってしまうタイプ(慢性・重症の人)の人は半月は出来る限り詰めて通院していただくようにアドバイスしております。長い年月をかけて歪んだ身体を一旦ほぐして、元のピシッとした身体に戻すまでは、ある程度は治す覚悟と期間が必要に思われます。ここにも患者さんの性格が現われます。元の歪みの無いしなやかな身体に固定するには慎重に事を運ばなければいけないのです。歪んだ身体にした自分自身の反省の期間ともいえると思います。セッカチで人任せの人はダメです。

Q3:完全に治るの?

A3: 患者さんの知りたい究極の質問ですね。多くの治療師はこの質問をされると「しばらく通ってみて、様子を見ましょう」と答えます。電気でもかけて、時間が経てば自然に治るかな?程度のいい加減な答えですね。正直に申せば完治というのは困難です。どうしてもその部分が弱点として残ってしまうようです。しかし、限りなく完治に近い状態には戻すことは経験上可能です。ただし、骨折、変形、手術後の部位などの物理的変化(骨の器質的な変化をともなうもの)は困難であると言わざるをえません。また、治療回数や期間、年齢などの諸条件が関係することは皆さんもお分かりと思います。治療回数も少ない、時々しか来ない、高齢な方が「さあ完治させろ」と言っても無理な話しです。(中年男性に多い)。また、どの人にも利き手、利き足、職業のタイプなど常に歪みを作り出しやすい環境の中で生活しているのです。つまり、常に歪みが作り出される状態にあるのです。手・足の酷使、中腰・前傾姿勢の疲労は腰に集中しやすく、腰痛を引き起こし易いのです。一度しっかり腰痛を改善したら、これを機会に自分の腰痛パターンや歪みの癖を理解し、1日の終わりにはアフターケアを行い、「その日の歪みは、その日の内に」の気持ちで生活していただければ腰痛の起こらない「完治に近い状態」を維持することが可能でしょう。くれぐれも言いますが「人体は歪みを起こしやすい構造にある」ということをお伝えします。
    また、1人で毎日アフターケアを行なうのは飽きるし、怠けてしまいたくなるのも分ります。むしろ怠けてしまうでしょう。私もそうです。そこで当院では歪みが正されて卒業の患者さんには二週に一回、月にニ回のメンテナンス治療を勧めています。

Q4:どのような順序で腰痛は改善されていくのですか?

A4: これは患者さんからの質問と言うよりも、こちら側の要望として患者さんに知っていて欲しいという気持ちから挙げてみました。腰痛の改善に関しては神経生理学的、筋生理学的に説明することが出来ますが、難しくなってしまうので、簡単に改善にともなう身体変化を申し上げます。
①痛みなどの感覚の異常が改善・緩和されます。
②身体の各部の歪みが正され身体重心が中心(腰)におさまります。言い換えれば身体の左右のバランスが調和されます。
③全身の筋力を向上し、筋力を効率よく使える身体に変化してきます。(環境に対しての適応力、竹のようなしなやかで柔軟な身体になります。筋肉量が多くてもガチガチの身体は融通が利きません。むしろ、筋肉は適度にあり、しなやかな身体の方が上質です。)

こうように、大体①②③の経緯を踏みます。しかし、残念なことに多くの患者さんは①の痛みが消失した時点で治ったと思うらしく、あまり足を運ばなくなるようです。そして数ヵ月後にまた同じように腰痛にて来院されるケースが多いようです。これは私の説明不足、啓蒙不足も一因にあると反省しております。
自然の法則として、歪みを正しては傷め、また、治しては壊しを繰り返す経験を通して、健康の大事さ有り難さを学ぶ機会になっているのかもしれませんね。出来ればはじめから③の「適性筋力でしなやかな身体」を手に入れて治療院を卒業するようにガンバって欲しいものです。

Q5:身体が歪むとどうなるの?

A5: 先に述べましたが、この質問も多いので改めてお話します。身体が歪むことにより手足の長さや左右の肩の高さ、首の傾き、首の回り易さなどいろいろなところに歪みが顕在化してきます。本来は限りなく左右対称に違和感無く動けることが理想ですが、歪みが生じているサインとして片方は動くが片方は痛いし、動かないなどという左右差が出ます。これらは鏡の前に立つことにより確認することが出来ます。しかし、何といっても自分では見えない「身体の後ろの歪み」がその人の歪みを明確に表します。自分に見えない部分というのが自然の怖さでもあります。また、この「背面の歪み」こそが治療のヒントが隠されているのです。当治療院ではこの「背面の歪み」をカメラで撮影し、患者さんに説明する上で利用しています。
    私が治療院勤めをしていた時ですが、当番で街頭ビラ配りをしていましたが自分なりに工夫して配っていました。皆がそうするように誰にでも配る「下手な鉄砲、数打ャ当たる」方式ではなく、私の場合は、まずその人の歩く格好や身体の揺れ具合、足の運びを観察し、最後に背中の様子をチェックしてからそれから一言「右の肩が凝ったらどうぞ!」、「左の腰が重くなったらいらして下さい!」とコメントをつけてビラ配りをしていました。すると数日後、ビラをもらった人が、「あの時どうして右肩と分ったんですか?その通りなので後で不思議に思ってました。」と来院されることが多々ありました。他のスタッフが驚いていたのを懐かしく思い出されます。種を明かせば、そんなに難しいことではなく、先に述べた、歪みの形と痛みの出現パターンを理解すれば高確率で当たるのです。話しは飛躍しますが、患者さんが痛みを訴える前に、治療者側が「ここと、ここが痛むようですね?」と指摘できなければ、治療師としての「目利き」が甘いと言えます。目利きが良ければ良いほど的確な治療を施すことにもつながりますし、治療効果の判定も、患者さんの訴えのみに頼らない、しっかりした基準が出来るともいえます。治療院選びの判断基準になるのではないでしょうか?

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